映画紹介シリーズ「来る」(ネタバレなし)
皆さんこんにちは。外へ出ると寒さがきつくなり、すっかり冬到来といった感じでしょうか。刺すような寒さとはよく言ったものです。
さて、付かぬ話ですがホラー映画は果たして夏だけのものなのか?いやはやそうでもないでしょうと、怖さの中に笑いや社会問題が来る、そんな話題作がこちら
来る
▼ストーリー
オカルトライター・野崎のもとに相談者・田原が訪れた。最近身の回りで超常現象としか言いようのない怪異な出来事が相次いで起きていると言う。田原は、妻・香奈と幼い一人娘・知紗に危害が及ぶことを恐れていた。野崎は、霊能力者の血をひくキャバ嬢・真琴とともに調査を始めるのだが、田原家に憑いている「何か」は想像をはるかに超えて強力なモノだった。
▼評価点
《心霊版シン・ゴジラ》
まずこの映画を一言で評するならば「心霊版シン・ゴジラ」です。(※TBSラジオ伊集院光 深夜の馬鹿力より)
ある日超強力な霊が田原家を襲い、それに対して日本最強の霊能力者とその仲間たちが戦うというのが全体の流れです。
...このように書いてしまうとめちゃくちゃ胡散臭い話ですね。
ではまず、なぜ「シン・ゴジラ」と評したのか、それは心霊の存在する世界のリアルなシュミレートであるからと言えます。
シン・ゴジラでは架空の超巨大生物「ゴジラ」が都内に出現したら、をシュミレートした作品と私は考えています。同様に「来る」も同じで、超強力な霊『何か』が登場した場合を想定して霊や霊能力者、それに関わる社会が描かれています。
つまり、霊や霊能力者という存在に付きまとう胡散臭さの消臭に成功した作品であるということです。
皆さんもネット上で展開される怖い話で、急に霊に詳しい坊主や寺生まれのナンチャラが出てきたら「うわっ急に胡散臭くなったな...」とか思った経験はございませんか?
まあそれでも作品内では霊的現象が起きますし、胡散臭いと思われる方も中には居られるかと思います。しかし、あの手の胡散臭いのが大の苦手な私でも約二時間熱中してしまいました。
《裏に隠れる社会問題》
この映画をただのホラー映画と侮るなかれ。「来る」の本当のテーマと言ってもいいのが社会問題、特に子供にまつわる問題です。
〈微ネタバレ注意〉
本映画で妻夫木聡演じる田原は、予告編で「優しいイクメンパパ」と紹介されているのですが、本編を見ると世間体だけを気にして育児は妻に全て任せきり。冒頭で子供時代にある少女から「嘘つき」と揶揄されていましたが、まさに予告編ですら「嘘つき」だったわけですね。
〈ネタバレここまで〉
映画の中で田原とその妻、香奈との間にできた娘、知紗は母親から育児疲れによる虐待やネグレクトを受け、物語の根幹に関わってきます。また、お祓いを依頼されたオカルトライター野崎、キャバ嬢の霊能力者真琴も過去に子供に対して何かを抱えている様子。ホラーに隠された人間の闇というもう一つのホラーをお楽しみください。
《中島哲也節》
この映画の監督さんは中島哲也さんという方です。元々はCMディレクターの方で、今作の宣伝で見かけた方もいらっしゃると思いますが、「告白」という映画を撮られた方でもあります。
怖いシーンから急に明るいシーンになったり、そうかと思えば逆に突き落とすように恐怖シーンに突入したり、サイケデリックな画面の演出をしたりと、告白が面白かった!という方にはまず間違いなくおすすめできます。逆説的に、この映画が面白ければ告白も面白いのでお得ですね。
▼批判点
例のごとく批判すべき点はそこまでないので章立てせずにお送りします。
まずこの映画が合う合わない以前に、身体欠損系のグロ、虫(特に芋虫)が駄目な人にはあまりおすすめできません。
シーンとしてはそこまで多くないのでまあ苦手レベルであれば我慢して見れないこともないと思いますが、完璧にそういうのが写るとだめな人はあきらめてください。
それと多少のびっくりシーンがあるのでそこも駄目な人はお気をつけて。
また、思い切り除霊やらなにやらの胡散臭いシーンは残ります。先ほど評価点では「胡散臭さの消臭に成功している」と評しました。勿論私はそう思いますが、ホラーで除霊とかそういうのあるとそもそも無理という人もいると思うので、ご注意ください。
▼総合
今までで述べたように「超強い霊がきたらどうなるのかシュミレーション映画」とどのつまり心霊版シン・ゴジラですので、私のように「日本で『心霊』ってつくとどうも胡散臭くて苦手...」という方にこそおすすめしたい逸品でした。
他にもただのホラー映画では終わらせないテーマ性や演出も作品をより良いものにしてくれたと言えます。
さて、そんな「来る」のおすすめ度ですが、個人的には90か95点はあってもいいとは思うものの、苦手要素を懸念すると...
83/100点
といったところでしょうか。
公開したばかりなので是非この冬最高の恐怖体験を劇場で。
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告白